2022年4月9日(土)、うまテラスのメンバー限定動画にてパラ馬術選手・稲葉将選手への特別インタビューを実施しました。
東京2020パラリンピックについて
競技・競技生活について
その他の質問
そこで今回は、本記事にて一部抜粋いたします。
うまテラスメンバーの皆さんは、メンバー限定の動画にて全編をご覧いただけます!
稲葉選手のプロフィール(HPより抜粋)
稲葉 将(Sho Inaba)
※障がい:先天性の脳性まひによる両下肢まひ
1995年生まれ 現在26歳
神奈川県 横浜市出身
東洋大学 国際地域学部 卒業
シンプレクス株式会社・静岡乗馬クラブ 所属
日本障がい者乗馬協会(JRAD)の強化指定選手として、世界各国で行われる競技会に出場する世界を股にかける稲葉選手です。
昨年の11月に開催された第5回全日本パラ馬場馬術大会では、71.545%を出し自己ベストを更新された今もっとも勢いのあるパラ馬術選手のお一人です!
東京2020パラリンピックについて
Q.東京パラ出場が決定した瞬間はどんなお気持ちでしたか?
稲葉選手(以下、稲葉):パラ馬術を始めたときから、東京パラに出場することが目標だったので、ほっと安心した気持ちが一番大きかったですね。
Q.どのような気持ちで競技に望まれましたか?
稲葉:当日の早朝に馬が競技会場に運ばれてきてから
自分の出場の出番が回ってくるまでは高揚感がありましたが、
いざ自分の出番になってからは何も覚えていません笑
直前まで色んな方から、応援メッセージをいただいて返信していたんですけど、それすらもあとで読み返さないと覚えていないレベルでした
Q.そんなド緊張の中での競技でしたが、全ての出番が終了したときはどんなお気持ちでしたか?
稲葉:目指していた舞台で、まずは2日間無事スタートからゴールまで演技することができてほっとしました。2日目の演技で、自己ベストを更新したときは結果が出せたのも、もちろん嬉しかったですが、僕を応援してくれている方々が一緒になって僕以上に喜んでくれたことが印象に残っています。
Q.東京パラリンピックで初めてパラ馬術を見たという方も多いかと思いますが、パラ馬術を通じて伝えたかったことや感じて欲しかったことはありますか?
稲葉:僕が練習に取り組んでいる姿や、試合で僕が演技しているのを観て、「こんな人も頑張っているんだったら、自分も頑張らなきゃ」と思ってもらえるような演技や活動をこれからも続けていきたいですね。
競技生活について
普段はどんなスケジュールで活動されていますか?
稲葉:基本的には週5日、静岡乗馬クラブで練習しています。
自分のパートナーはもちろん乗りますが、それ以外の乗馬クラブが所有している乗馬にも乗せていただくことがあり、騎乗から手入れという流れを繰り返しています。
騎乗以外も、自分でできることは自分でするようにしています。
Q.馬具にはどのような工夫・加工がされていますか?
稲葉:アブミが踏ん張りづらいので、アブミカバーにゴムをつけています。また、アブミが脱げにくいようにかかと部分にゴムもつけています。馬具の工夫や加工によっては、FEI(国際馬術連盟) に申請する必要があります。
Q.海外遠征を控えているとのことですが、馬は連れていくのでしょうか?それとも現地で借りるのでしょうか?
稲葉:東京パラリンピックのパートナーも競技団体でリースしている馬(今までと同じパートナー)で出場して、元々オランダにいる馬なので
その馬に乗り、海外の競技会に出場する予定です。
Q.稲葉選手が思う、海外でしか学べないことはなんでしょうか?
稲葉:パラ馬術選手の数が多く、トップクラスの選手と同じ競技会で戦えることだと思います。東京パラリンピックに出場していた選手たちが
世界選手権にそのまま出てくるので、パラリンピックの雰囲気のまま同じ出場メンバーと試合することができます。
Q.海外遠征にかかる費用や馬の管理費等、競技を継続していくための費用はどのように調達していますか?
稲葉:シンプレクス株式会社という会社に
障がい者アスリートという枠で
雇用していただいており、給料をもらいながら活動しています。
海外遠征や馬の管理費、馬のリース料などは、競技団体の予算から出 してもらっています。
Q.馬と出会って乗り始めてからフィジカル面やメンタル面でどんな変化がありましたか?
フィジカル面では踵がつきやすくなりましたね。
精神的には目線の高さや爽快感が味わえないので楽しいですし、
競技に切り替えてからは目標ができました。
最初は怖かったけど、やっぱり馬に惹きつけられるものがありました!
Q.ホースセラピーを提供するにあたってマストな事とはなんでしょうか?
稲葉:セラピーを進めていくうちに、対象者との意思疎通が難しくなるタイミングがあるので、その際にしっかり対話をして乗りたいのか乗りたくないのかを見極める必要があると思います。また、なにを目的としてセラピーなのかといった目標の設定。あとはセラピーを施すチームの意思疎通が大切だと思います。
Q.日本のパラ馬術が強くなるためなにが必要でしょうか?
稲葉:「経験」が必要だと思います。僕も東京パラリンピックを経験した後に開催された全日本パラ馬術選手権ではこれまで以上に落ち着いて臨むことができました。僕をサポートし続けてくれている関係者各位に感謝して、かつ結果を出しつつ、これからもそういった経験を積んでいきたいですね。
その他の質問
Q.常に上を目指し続ける稲葉選手の原動力とは?
稲葉:やるからには上手くなりたいという思いが一番強いです。
東京パラリンピックでも自己ベストを更新しましたが悔しいと感じました。
これまでは海外勢が憧れの的だったのが、同じレベルで戦ったことによってリスペクトはもちろんありますが、悔しいという感情が湧いてきました。これまでは、海外選手をリスペクトしすぎていたのかもしれませんね。
Q.今後の目標をお聞かせください
稲葉:8月に開催される世界選手権で自己ベストを更新したいですね。
あとは2024パリ五輪への出場枠をどんな形でも獲得し、出場したいです。
また、現在の自分の活動を継続し多くの方にパラ馬術競技を知ってもらいたいです。
インタビューを終えて
今回のインタビューで初めて稲葉選手とお話させていただきましたが、柔らかく優しい印象の中に、強い気持ちの芯を感じそのギャップに驚かされました。
稲葉選手はまだ26歳と馬術会では若い選手ですが、これからパラ馬術を背負って立つ選手になるのではないか、そんな気持ちを抱いてインタビューは終了となりました。
うまテラスも今年で活動3年目とまだまだ若いですが、馬をもっと身近に、という理念を曲げずに稲葉選手に負けないように活動していかなければと気が引き締まりました!
このインタビューが、どうか多くの方のお目に留まり、もっとパラ馬術を知っていただければなと思います。
今回、インタビューの機会を与えていただいた日本障がい者乗馬協会(JRAD)様、インタビューのために貴重なお時間を割いていただいた稲葉選手、本当にありがとうございました!
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